ポンちゃんへ


ぼくは、昼公演を見ながらこんなことを考えていたんだ。
紺野あさ美が芸能界からいなくなってしまう、ぼくが彼女を確認できなくなってしまうということは、ぼくにとっては彼女は存在をしなくなってしまうということ、つまり、ぼくにとっての紺野あさ美は今日で死んでしまうのだ。でも、こんなにも多くの人に愛されて、こんなにも満足げな顔で去っていくのであれば、それは、大往生なのではないか。ぼくは年老いた肉親を見送るように、紺野あさ美の大往生を涙を流しながら受け止めようと。
でも、きみの卒業公演を見終わったぼくは、、、そんな気持ちにはなれなかった。きみの卒業を聞いてから今日までのもやもやした気持ちが、きみの素敵な卒業式をみてもちっとも晴れない。身の置き所のない、腰の座らない、自分気持ちを言葉にして現せない状態のまま、ぼくはどの終演後の飲み会も参加せずに、家路に着いた。こんな気持ちのままで誰かと飲んでも、刹那的にその場を楽しむだけで、何の結論も出ないと思ったから。それは、ぼくのモーヲタ人生にとって、決していいことではないから。
地元の駅に降り立ち、駅前の焼き鳥屋のカウンターできみのことだけを考えながら、ひとりで生ビールのジョッキを空ける。そして、ぼくは卒業をするきみに送る言葉をやっと思いつくことができたんだ。

きみを、待っていてもいいですか。

こんな女々しい言葉しかかけられなくてごめん。戻ってきてほしいとはいわないけど、でも、きみのことを待っているぼくを許してください。
きみが帰ってくるかもしれないという想いを胸に、ぼくは明日からもモーヲタハロヲタであり続けます。