キムカツ

dhuerou2006-09-01

先日、恵比寿で仕事関係のセミナーがあり、お昼の休憩に何を食べようかとうろうろしていたところ、偶然にも噂の「キムカツ」を発見。想定していた昼食代に比べると、ちょっと高額ではあったが、こんなチャンスでもなければわざわざ来るタイプのお店ではないので、とんかつ好きとして勝負を挑んでみた。
店構えは今風のコジャレタ和風でありながら落ち着いた感じもあり、コンセプトをしっかり持って店舗をつくったことがうかがえる店構え。行列店なので店舗前に並んだ椅子に腰掛けて入店の順番を待つ。わたしの行ったのは12時半を過ぎたぐらいだったので待ち人数は6〜8人だったが、一巡目が終わる時間なのか程なく店内に案内された。待っている間に係のお姉さんがあらかじめメニューを渡して人数を聞くのだが、このお姉さんがですなぁ、非常に無愛想。笑顔のかけらもない。町の老舗とんかつ屋のおばちゃんの無愛想は許せるが、新進のきれいな変り種とんかつ屋のサービスが無愛想ってのは、どんなもんだろう。先にサービスのことをまとめて書いてしまうが、店内のサービスは人数はいるがどれも若い女子アルバイト。上記の無愛想なお姉さんがちょっと地位が上という感じで、他にホールの責任者として黒エプロンのお兄さん。各アルバイトの接客はおしなべてマニュアル的流れ作業でお客様をもてなすという気持ちが感じられるものではなかった。お昼の混雑も一山超えたところだからか、全体的に緊張感のないサービス。
わたしが頼んだのは、「ぷれーん」というタイプ。(他に「黒ごま」「がーりっく」「チーズ」等の肉の間に風味物が挟まっているタイプも提供されている。)赤味噌白味噌をチョイスできるお味噌汁、木のお櫃に入って提供される炊き立てご飯、三種の香の物がついた「炊き立てご飯セット」で、1,930円。高級とんかつ屋としては決して高い価格設定ではない。
まず、運ばれてくるのはやや深さのある皿に山盛りにされたキャベツ(お変わり自由)。テーブルの上にはちょっとかっこいい入れ物にドレッシングが入っていて、これをかけて食べる。もちろん、壷に入ったソース(甘め)も置いてあるので、そちらをかけるのも可。これはおもしろいと思った。かつが揚がるのを待つ間に、キャベツを前菜として食べさせてしまおうというのだ。キャベツには消化酵素が含まれているので、脂っこいとんかつを食べる前におなかにに入れておくのは胃にもいいだろう。皿が空になっていると、サービスのお姉さんたちがかなり積極的におかわりを聞いてくれる。あまりに積極的過ぎて、隣の客は「おかわりはかつが来てからで願いします。」と断ったのにいろんな人に三回も聞かれてたが。
いよいよ噂のキムカツ登場。キムカツというのは「ロースの部分のみを超薄切りにして25枚以上に重ね」てつくったかつなのだが、まず出てきた第一印象は「けっこう小さいなぁ」。イメージとしては大判メンチカツぐらいの大きさといったところだろうか。とんかつを食うぞと意気込んできたサラリーマンは拍子抜けするぐらいの大きさ。しかし、とんかつでも食べちゃおうかしらと訪れたOLにはちょうどいい量。ここで特筆すべきはソースの扱い。ふたつに分かれたお皿の片方におろしポン酢が入れられており、もうひとつのほうにソースを入れて、どちらかを浸けて食べるように指示をされる。からしは、、、ない。お櫃で提供される炊き立てご飯を自分でよそって、早速いただくことにする。TVで観たように押すと中から肉汁がじゅわ〜と出てくるようなことはさすがになかったが、口に含めば充分にジューシー。豚肉を食む楽しみはないが、豚肉独特の油とかおりを口の中に残しふわふわとなくなっていくような柔らかな歯ごたえは、なるほどこれはなかなかにおもしろい。このやさしく柔らかな味わいを引き立てるのは、やはりおろしポン酢。ソースで食べる場合でもちょっとだけつけて口に運ぶのがよい。普通のとんかつのように甘いソースを上からジャバジャバとかけたのではでは、キムカツの噛んだときに感じられる繊細な風味を感じとることはできないだろう。からしが用意されていないのも同様にうなずける。わたしがセレクトした赤だし味噌汁も、いわゆるしょっぱい蜆の赤だしではなく、なめこの入ったやさしい味わい。かつが上がる時間に合わせて炊き上げられるというご飯も甘みがありおいしい。
全体の印象としては「きれいにまとまっている食事」だなぁ、という印象。いわゆる「とんかつ」をイメージして訪れると肩透かしをくらうが、新しいジャンルの食事を女性をターゲットに提供しているお店としてはコンセプトが練られていて、よくできていると感じた。オトコの食べ物というイメージのとんかつを良くぞここまで女性に受けるようにアレンジをしたものだとおもう。ちなみに、店内にかかっているのは洋楽。
ただし!ここまでコンセプトを磨きぬいた店であるのなら、それを提供するサービスにもこだわりを見せて欲しいものだと心から思う。この店で緊張感のあるサービスを提供し、この状態を10年続けることができれば名店にもなりうる店だと思う。流行の店として時代を駆け抜け、尻すぼみになくなってしまうのはちょっと惜しい気がするのだ。
帰り際のお会計時に入り口にいた例の無愛想なお姉さんに、なぜテーブルにからしがないのかを問いかけてみたが、「??」という感じだった。すかさず後ろにいた黒エプロンのお兄さんが「からしはテーブルには置いていないのですが、おっしゃっていただければ、ご用意できます。」とのコメント。ちがうんだよ、わたしが聞きたいのはコンセプトとしてからしをテーブルに置かないという店の味へのこだわりへの説明なんだよ!

http://www.kimukatsu.com/index.html
http://tokyo.gourmet.livedoor.com/restaurant/info/13448.html